ロックダウン28日目
ここ最近家に引きこもりながらコミュニティが広がっている。
尊敬している四角大輔さんが学長を勤めるオンラインサロンに入会したのは2月のこと。昨年の秋、東京で開催されたBiople by cosmekitchin主催の四角さんとミーガンさん対談トークイベントが抽選で当たり、参加したのが入会のきっかけとなった。サスティナブルをテーマに、世界の自然環境保全やNZでの自給自足生活、ビーガンやオーガニック文化がNZでは特別なものでなく日常生活の中に自然とあるということなど興味深い話を沢山してくれた。その後NZブランドの食品や雑貨を扱うコーナーにて、彼の著書『Lovely Green Newzealand』を購入し、サインをしてもらった。そのときに、NZへ行くことを話した。四隅さんは、確実に今より良い人生が待っているよ。とまっすぐな瞳で言ってくれた。
そして今年の1月NZにやってきて、今に至る。彼の言ってくれた通りNZに来て心から幸せに思う。コロナにより状況は大きく変わったが、心穏やかに暮らせているのはこの環境が自分にしっくり来ているからだと思う。オンラインサロンで出会った人たちは魅力的な人ばかりだ。自粛生活の中でもズームやライン電話をして交流を深めている。帰国したタイミングでメンバーに会えるのも楽しみだ。そのメンバーを通じて思わぬ形で大学時代の後輩ともつながったりと面白いことが続いている。
今回はジャイプール編の続きを綴っていく。
朝目覚めると部屋に朝食が運ばれて来た。良い待遇のゲストハウスだなと思った。朝から激甘のチャイティを飲み、ジャイプール観光に出かけるため、スタッフにトゥクトゥクの手配をお願いした。
やって来たのは恰幅の良いカーンさんというドライバーだった。既に軽い人間不信に陥っていた私は、料金交渉や観光したい場所についても事前に話し、ある程度のコミュニケーションを取ってから行きたかった。
カーンは私の話をじっくり聞いてくれたあとに、僕はジャイプールで生まれ育ったから、この街の良いところも悪いところも全部知っている。観光客目当てに高い料金をふっかけるような場所に君を連れて行くことはしたくない。と言ってあらかじめおすすめの場所とそうでないところを丁寧に教えてくれた。この時点で、私は彼が今までのお金目的のドライバーとは違うなあと感じていた。
彼とは出会ってすぐに意気投合した。彼の陽気でジョークを言って楽しませようとしてくれるところに好感を持った。私が、野生のトラを見に国立自然保護区に行く予定だと話すと、カーンが
この街にも一頭だけ野生のトラがいるけど知ってる?と質問して来た。
えー!!そうなの?どこにいるの??と興奮気味に聞くと
それは、この俺さ。アハハハハハハハハハハハ。
つられて私も爆笑した。
日本語での会話ならなんの面白みもないジョークに聞こえるかもしれないが、何故か英語でこの会話をしただけで彼がかなり面白いコメディアンに見えたのである。私はこの現象をイングリッシュマジックと名付けた。
ジャイプールは世界有数の宝石が集まる街として有名だ。また、一部の地域の建物がピンク色であることから別名ピンクシティと言われている。カーンはまずピンクシティの象徴として多くの観光客が訪れるハワー・マハル(風の宮殿)へ連れて行ってくれた。ここは宮殿史蹟であり、5階建ての建築物に通気性を重視して953の小窓がある。極端に多いなと思った。
この小窓から宮廷の女性たちが自らの姿を外から見られることなく外の様子や祭りを楽しんでいたそうだ。
館内見学も可能だが、カーンは入館料を支払ってまで行く価値はない(まあまあ失礼)とさらっと言って外観から写真をとる時間をくれた。正直なところ旅では歴史的建築物にそこまで興味が湧かないタイプなので、カーンナイス!と思った。
その後、ジャイプールのアンベール城へ向かった。ここで一旦彼と別れた。
このアンベール城へは像に乗って観光するのが人気だそうだが、私は専用の4WD車で急な丘をのぼってもらった。理由は日中40度近くまでいく気温と灼熱な太陽の下で、像さんにのって優雅に観光していたら溶けると思ったからだ。こんな日に像さんたちもかなりの重労働である。
16世紀にマハラジャが築城したアンベール城は、150年間もの間増改築が重ねられ、都として繁栄したそうだ。壁面に描かれた幾何学模様や、世界一美しいと言われるガネーシャが描かれた門に、小さな鏡が散りばめられた鏡の間はとても美しくて、異次元に迷い込んだかのうよな不思議な感覚だった。
ある程度一人で観光したあとは、4WDドライバーのおじさんが、像たちが暮らす宿舎に連れて行ってくれた。予期せぬオプションツアーとなったが好奇心が勝った。
像の宿舎は薄暗く、子どもから大人の像たちが太い鎖に繋がれていた。ここからアンベール城まで人を乗せて往復する毎日だと知って、悲しくなった。自由もなく人を乗せるだけの日常を想像するだけで苦しくなった。人間に置き換えると部屋では身体の自由を奪われ、仕事では毎日同じ道を重い荷物を背負って、ひたすら往復するのだ。苦行以外の何者でもない。
しかし遥か昔から像や馬やラクダなどの動物に頼ることで文明は発達し、暮らしが豊かになったのは言うまでもない。長い歴史の中で拭いきれない人間と動物の上下関係のようなものがあるのだと改めて考えさせられた。そんな私もタイやラオスで像に乗ったことがあるので思考と行動が矛盾しまくっているとも思った。そんなことを考えつつも、つぶらな瞳のかわいい像たちを前にするとテンションがあがった。飼育員のかけ声で私の首に花飾りをかけてくれた芸達者な像たちと、わずかな時間でスキンシップを楽しみ、像への餌代としてチップを渡した。
カーンと再び合流すると、これから僕の家で一緒にランチをしないかと誘ってくれた。
カーンは良い人だと思うが、出会って数時間そこらのおじさん家に行くのはリスキー過ぎる。
日本でもさすがにやったことはない荒業だ。
私がしばらく険しい顔で考えていると、これが僕の家族だよ。と、とってもキュートな3人の娘の写真を見せてくれた。
しかしこの写真だけで真実か嘘かは判断し兼ねる。ネットから拾って来たイメージ画像かもしれん。
仲良くなったら家に誘われ、睡眠薬入りのドリンクを飲まされ、お金を盗まれたりレイプされたなんて恐ろしすぎることがインドあるある話として実際にあるのだ。ここはどちらにせよ断るべきだと思った。
しかしカーンは奥さんと思われる人物に電話をし、カレーを作って待っておくように伝えたとのこと。
いや、まだ行くって言っとらんけどな!!!!
そして私は、出会ったばかりのインド人おじさんの家に行くことになるのだった。
つづく