あっという間に、38週に突入した。
お腹のまめは朝晩元気に動いているが、おしるしや前駆陣痛などの予兆はない。
どうやらマイペースボーイらしい。
こちらが早く逢いたいと急かすほど、ぎりぎりまでお腹のなかでぷかぷかしているのではないかと思い始めている。
タウランガにも紅葉シーズンがやってきた。
昨年はロックダウン開けで、ぎりぎり南島のアロータウンにておわりかけの美しい紅葉を愉しむことができたのがまだ記憶に新しい。
今年は出産の時期とかぶり、車もない生活なので諦めていた。
歩いていける距離には紅葉樹はあまりなく、未だに常夏感さえ感じる南国の樹木ばかりだ。
先日、友人が身動きが取れない私を気遣って、広大な森と湖のある場所へと連れ出してくれた。
いつ産まれてもおかしくない数週であるが、自宅から車で25分というさほど遠くない距離だったので念には念をグッズを持って出かけた。
着いてみると、スクールホリデー期間ということもあり、家族連れやカップルで混雑しているかのように思えたが、あまりに広大な敷地面積が故、さんぽコースで人とすれ違うことはほぼなく、とても静かでおだやかな時間となった。
全てが紅葉しているわけではなく、赤やオレンジ色に美しく染まった樹木と、まだ青々としている樹木のコントラストが非常に美しく、自然とため息が漏れた。
湖に光が反射し水面が輝き、黒鳥やカルガモたちが仲良く泳いでいて、おとぎ話の世界に浸るには十分すぎる設定の景色が広がっていた。
記念にと周囲の誰もがカメラを向けるその光景は、日本の象徴である桜を万人が無我夢中で撮る情景と重なる。
どこを切り取っても絵になる写真ばかりで、友人とふたりでカメラマンになれるかもしれないと、真顔で言い合い、互いの作品を見せ合う遊びも愉しんだ。
臨月になると沢山歩くことをすすめる記事を目にするが、目安がわからず毎日最低30分は歩くようにしている。
いつも同じルートや景色をみて歩く日々に少々飽きていたので、はじめて歩く道や森の中のさんぽコースは新鮮で何時間でも歩けそうな気さえしてくる。
おなかの中のまめをせかすつもりはないが、この世界にはこんなにも美しい世界が広がっているということを教えたくてたまらない気持ちになるのである。
さんぽのあとには、ガーデンカフェにも連れて行ってくれた。
木の枝にティーポットがいくつも吊るしてあったり、ティーポットカバーがやたらと可愛かったりと、女心をくすぐるアイテムたちで埋め尽くされていた。
ひとりでくつろぐカフェと、友人同士で愉しむカフェに求めるものが違うのだと、NZに来てからはっきり分かるようになった。
ひとりカフェにはくつろぎ空間かどうか、店員さんとの距離感などを重視するが、友人とはガーデンカフェのようなテラスからの景色や、甘いものをシェアしながら止まることのないおしゃべりを愉しむのが良い。
いつも素晴らしいプランを考えてくれる友人に感謝し、帰宅後も撮り溜めた写真を見ながら余韻に浸るまでが、私にとって至福の時間だ。
NZでの美しい秋の情景を、心の片隅にいつまでも真空パック状態で保存しておきたい。