警戒レベル2 14日目
昨日のことだ。友人からRoys Peak に行くけど一緒にどう?と誘ってもらい、それがどこにあるのか、なんなのかも全く把握しないまま、行くと即答した。
まず、ここでお気づきの方もいると思うが、返事する前に場所くらい調べよ。という話である。
トレッキング好きの友達からの誘いだったので、何かしらの山か丘であろうと勝手に予想していた。
シェアメイトメンバーの、Mくん(イタリア人)が運転をしてくれて、Iちゃん(チェコ人)、Hちゃんと共にWanakaへ向かった。待ち合わせ場所へ行くと、皆なかなかの重装備であった。
登山用のバックパックにはやたらと荷物が詰められており、アウトドア用ではない小さめのリュックがすっかすかな私一人完全に浮いていた。心配になって一応トレッキングシューズにだけ履き替えたが、とりあえずそのまま出発。
私のすかすかリュックのことを気づかってくれたのは、チェコ人のIちゃんである。多めにサンドイッチやフルーツを持って来たからあげるね!と言ってくれた。やはり1〜2時間程度では帰って来れないのだなとすぐに察した。
あとになって知ったのだが、Wanakaの景色を一望できるRoys Peakは、16キロのトレッキングコースで、所要時間6時間ほど。標高差は1300mだそうだ。
そりゃ軽食必要だ。納得である。
そんな私が持って来たのは、300ミリの水筒に、チョコボール3つ、財布、日焼け止めのみである。
舐めすぎたトレッキング初心者にもほどがある。しかしもう車に乗ってしまっているので、特に気にしないことにした。
車内では嵐のHappinessが流れ、Iちゃんが英語の歌詞を見ながら一生懸命歌っていた。
ハシリダセ ハシリダセ 〜 アスヲムカエニユコウ〜 キミダケノオトヲキカセテヨ〜
今の私になんとなくぴったりの歌である。そして彼女の発音がとてつもなくよい。ひとつずつこれはどういう意味?と聞いてくるのも微笑ましい。
Iちゃんはすぐに歌詞を覚えて、トレッキングの間中、ハシリダセ〜 トメナイデ〜を連呼していた。
ちなみに彼女と私は同い歳なのだが、人としてとても成熟していて、さりげない気遣いもパーフェクトで、アッポーペンの芸が達者な陽気な女性だ。密かに憧れている。
Roys Peakの登り始めは、霧が深く空は曇っていて、絶景を望める希望はなさそうだと薄々感じていた。
しかし登り始めて1時間が経過した頃、厚い雲の上に晴れ間が見えた。だんだんとわくわくしてきた。
途中ランチ休憩を挟んだ。
何も用意して来なかった無計画女をよそに、それぞれサンドイッチやおにぎりを持ってきていた。そしてごく自然の流れでお裾分けをしてくれるマザーテレサのようなシェアメイトたち。ありがとう。
美味しすぎて幸せのため息が漏れた。
Iちゃんに至っては、水が随時足りているかも聞いてくれて、毎度優しさに救われた。
そして彼女は、More people More fun ♪ と何度も言っていた。
彼女が発する言葉は、分かりやすくて温かみのある英語が多い。勉強になってすぐに使いたくなるフレーズばかりだ。
頂上手前の絶景ポイントにたどり着くと、雲海が辺り一面広がっていた。湖を望む絶景はクイーンズタウンでも見れるのだが、雲海に関しては、天候や湿度、気温、様々な条件が重なって運良く見れるものだ。よく飛行機の上から見ることができるが、今回の雲海は珍しく、日中から日没後まで消えることがなかった。
皆思いおもいに写真を撮った。Hちゃんは写真が趣味の本気(マジ)な山ガールだ。日本やカナダで様々な山に登り、下りは走るのが好きだという自然大好き体力オバケ女子である。彼女の撮る写真が好きで、3人とも彼女のカメラに写りたがった。中でもイタリア人のMくんは写真が大好き。気がづくとモデルになっており、Hちゃんがカメラマンという構図になっている。
ニュージーランドにいると、美しすぎる絶景に怖さを感じることがある。
理由はうまく説明できないのだが、この世のものとは思えない絶景にそう感じてしまう。
まさに今回の景色はそれだった。
いつまででも眺めていたいような、時折目を逸らしたくなるような景色。
モノクロの世界から少しはみ出したようなグレーの世界。
頂上に着くと、また違った景色が広がり、より一層感動した。
夕日が沈んだあとも、空の色がグラデーションで少しずつ変化していく様も本当に美しかった。
どこを切り取っても絶景なのでカメラのシャッターボタンを押さずにはいられないのである。
日が落ちて暗がりの中、下った。ライトを照らしながら歩く長い長い下り坂だった。
途中からは瞑想状態となり、下る為に下る。歩く為に歩く。といったシンプルでクリアな状態が心地良かった。
ここで見た景色と感動をみんなでシェアできたことが何より嬉しく、幸せだった。
ありがとう。
おわり