子育てが始まってから気づいたことがある。
時間の流れが夫婦2人の時よりも、10倍くらいにスピードアップした。
日々我が子の授乳、排泄、睡眠のサイクルに寄り添うと朝起きて、気づいた時には夕食の時間になっているのだ。
息子がぐずると、授乳いつした?と夫が聞き、
さっきだよ。と私が答えるのだが、私の中のさっきはすでに1時間以上前のことになっているのだ。
それだけ目の前のこどもの事に追われた生活を送っているということであり、良く言えば時間を忘れるほど子育てに夢中になる生活に変わったということだ。
それでも1日の中で必ずひとり外出の時間は捻出しているし、我が子の笑顔を見る度に幸せな気持ちになる。
子育ては一見すると親から子へgiveしているようで、子から親へgiveしてもらっている方が大きいように感じる。
今回は、NZの産後ケアについて書いていく。
日本では、退院後里帰りで産褥期を過ごす母が多い。助産師のサポートは自ら出向かない限り、退院するまでが一般的だ。
ニュージーランドでは、病院、バースセンター(助産院のような施設)、自宅のどこで出産しても産後6週間頃まで、専属のミッドワイフが自宅訪問に来てくれる。その後ミッドワイフからプランケットという国が運営する団体のナースに引き継がれるシステムだ。
プランケットナースは主にこどもの健康状態を管理してくれ、月に1度ペースでの訪問、もしくはナースの勤務しているクリニックに行くことになるそうだ。
NZの約90%のこどもたちがプランケットナースのサポートを受けているとのこと。
こどもの健康や発達のチェックの他、母親の子育の悩み相談、地域の母子コミュニティの紹介など、様々な場面で専属のナースが母に寄り添い、5歳になるまで子の成長を見守ってくれるという心強いサポート体制が整っている。
NZで出産すると決めた妊娠前期の頃から出産直前までは、産後の自分がどうなるのかを想像することができなかった。
友人の体験談を聞いてふむふむと頷く程度で、産後の心身のダメージや変化は人それぞれだしなあ、くらいにしか考えていなかった。
実際に経験してみると、身体が完全に回復するまでの6週間は、助産師のサポートなしでは乗り越えられなかったと思う。
助産師訪問は人によって頻度は異なるようだが、私の場合は産後1週間はほぼ毎日、それからは週に1〜2回訪問してくれた。
子どもの体重測定や健康チェックの他に、母がしっかり休めているか、授乳はスムーズか否かなど母の精神面のケアまできめ細やかな対応をしてくれた。
産後2週間は、授乳が上手くいかなかったり会陰の傷が痛かったりと、辛くて仕方がなかった。
会陰は切開せずに、裂けた部分が自然治癒するまで辛抱強く待たなければならなかったので、ことあるごとにミッドワイフに連絡しては快方へ向かうためのTipsを求めた。
訪問のない日はメールでやりとりをし、おすすめの授乳グッズや会陰ケアの方法を丁寧に教えてくれた。
会陰の傷ケアでは主に、痛み止めの処方、会陰部に付けるボタニカルのクリームをくれたり、トイレの際に温かいお湯をかけながら排泄する等のアドバイスをくれた。
訪問時に椅子に座るのが痛いと嘆くと、バスタオルをドーナツ型に丸めてクッションをつくってくれた。
我が子が片方の乳からしか飲んでくれないと相談すると、抱き方を変える提案や加え方の角度の指導、おっぱいマッサージの方法など授乳がスムーズにできるまでサポートしてくれた。
夫以外、近くに身寄りのいない環境での出産は少なからず不安もあったのだが、母のように優しくて温かい2人のミッドワイフが母子のケアに尽力してくれたおかげで、今こうして楽しく子育てをすることができている。
日本では里帰りをすれば家族からの援助を受けられるが、それと同時に専属助産師が産褥期を終えるまで母子に寄り添ってくれたら、どれほど救われるだろう。
また、事情があって里帰りができない家庭は、退院してから孤独と不安感に苛まれてしまうのではないかと想像する。
日本でも今後、産後ケアへの重要性が認知されて産後の母子に寄り添う社会になってほしいと心から願っている。
帰国してからは、子育てに奮闘する親御さんのフィジカルとメンタルのサポートを仕事にしたいと思っているので、NZでの出産経験は良い財産となった。
おわり