警戒レベル2 7日目
街は未だに静かだが、お店が開いているだけでありがたい。朝早起きをしてスーパーに行った。
夫に9ヶ月ぶりの朝食を作ったら、思いの外喜んでくれた。
ただ蒸した野菜サラダとフルーツ、2種のチーズを使ったトーストだけなのに、
夫は過酷な旅の経験値が高すぎて、どんな些細なことにも幸せを感じられるプロなのだ。
昼食後、数日前から発見した虫歯と思われる歯が気になって仕方なくなり、意を決して知人に紹介してもらった
歯医者へ予約をしに直接出向くことにした。
普段から歯のケアは怠らずにしている方(以前歯科助手をやっていた為)なのにまさか異国の地へ来てたった4ヶ月で虫歯になるなんて、自己管理が出来てないにもほどがあると悔やんだ。
入り口のドアを控えめに開け、受付のお姉さんに予約をしたい旨を緊張しながら伝えた。
すると威勢の良い受付のお姉さんは、今たまたまアポが空いたから、
これから治療できるけどどう??と、まるで友人にランチの誘いをするかのようなノリで提案してくれた。
心の準備はもちろんできていなかったが、次のアポはかなり先になるというので、二つ返事で治療することに決めた。
診察室から、おじいちゃん先生が出て来て、ATSUSHI~!と呼んだ。わたしの名はATSUKOだ。
しかし患者は私しかいない。仕方なくアツシとして診察室に入った。
その後何度かATSUSHIと言うので訂正したのだが諦めることにした。
左下の一番奥の歯にステージ1レベルほどの虫歯があると思うんです〜。と症状を伝えて診てもらった。
黒っぽく変色していた箇所を器具で触りながら確認する先生。
そして歯科助手さんに鏡を持たされて歯を見ると変色していた箇所が消えていた。
もしや、、、
ブラックペッパーが付着していただけだった。
嘘だ。ここ数日その箇所だけ何十回磨いても取れなかったやつがブラックペッパーなんて信じたくなかった。
それにしても歯にフィットしすぎやん。今までそんなしぶといペッパーおらんかったって。
いかにも歯を磨いていないやつだと思われるのが辛かったので、以前歯科医院の助手をしてて〜という謎のアピールをしてしまった。
おじいちゃん先生は笑いながら何の問題もないよ、とさわやかに笑いながら言った。3分で診察が終わったのである。
恥ずかしすぎてこのまま引き下がる訳にはいかんと謎の抵抗をしてしまい、念のため全ての歯のチェックをお願い!念のため!と必死に訴えた。結果なんの問題も見られず、ただの保険の効かない高額な歯科検診は終了した。
ただ恥をかきに行った、海外での初歯科検診であった。
おわり