ピクトンからウェリントンに到着したのは2日前のことだ。
時間はあっという間に過ぎていく。
ピクトンからウェリントンへ向かう大型船の中で一人の青年に出会った。
久しぶりの船旅に心躍らせ、船内のレストランにてランチを購入しようとした時だった。
会計のお兄さんから、どこの出身かを聞かれた。だいたいレジで店員さんと会話をする場合は、たわいもない挨拶ばかりであるが、急な出身地の質問に少し身構えてしまった。日本だと応えると、彼は嬉しそうにニホンゴシャベレマスと言った。
そこから仲良くなるのに時間を要さず、翌日には彼の住んでいる街でもあるウェリントンで食事をした。
ザックという名の青年は、高校生の頃に日本へ留学経験があったそうで、4年前に10ヶ月勉強したという日本語を流暢に喋り始めた。ウェリントンの日本食は本物じゃないと、どこか切なそうに言った。日本のリアルジャパニーズフードを知ってしまったが故に、こちらでの日本食を好意的に感じていないようだった。
そして話題はジブリへ。日本のことが好きな外国人は高確率でジブリをみている。プリンセスモノノケと、ナウシカが好きだと語っていた。世界の宮崎駿という言葉の重みをさまざまな国で感じている。
そしてジブリを通して交流が深められることに感謝をしたい。駿さんありがとう。
彼は現役の大学生ということで、映画製作を学んでいるそうだ。将来はドキュメンタリー制作に携わりたいと意気込んでいてすてきだと思った。
ザックにニュージーランドの教育について聞いてみると、とてもゆるくて自由に学べる環境なので自分次第だと言っていた。
自由が保証されているということは、その分自分が何を学びたいのか、何が必要ではないのかの取捨選択が必要になる。NZでは、高校生から科目選択の自由度が高くなるそうで、一度捨てた科目を再び学びたいと思っても戻れないのがデメリットだと、現地に通う高校生の友人が教えてくれた。
NZでは自由度の高い環境の中で、自己コントロールをしながら学ぶ必要がある。勉強しなくても周囲から何も言われないので堕落するのも簡単だそうだ。
日本の教育システムは、詰め込み式で留学したザックもかなり窮屈な教育だと言っていたが、周囲と同じ勉強をしてテストで点数をとって成績を保つことをプライオリティになっているので、ぎりぎりまでじっくり将来を考える機会がないような気がする。
日本でも、欧米で取り入れられている高校卒業後のギャップイヤーのように、高校卒業後にどんなことをしたいか考える時間があったらいいなあと思う。
ザックは日本留学時に日本を旅したようで、しまなみ海道がお気に入りだと言っていた。私は行ったことがないので共感できなかったが、自転車で通過したことがある夫とは意気投合していた。
数ある観光地の中からのしまなみ街道は、ツウだなと思った。
また、今は廃墟となっている奈良ドリームランドにも行ったそうで、警察にばれたら罰金だから怖かったと言っていた。廃墟巡りでは、怪奇現象に怯えるのかと思うが、怖がるポイントが違っておもしろかった。
当時は、日本の高校生と学生生活を共にし、放課後は現地の大学生と遊びまくっていたらしい。世渡り上手すぎる。
ユニバーサルでは、日本人の元カノがスタッフだったおかげで入園無料で愉しんだとのこと。
若干18にして、当時学生だった私よりも日本を満喫しまくっている。
好きな日本食は広島焼き。納豆は臭すぎて無理だったらしい。
きっと私も海外で生まれ育ったら納豆のことは受け入れられないだろうなと共感した。
とにもかくにも、現地の学生ザックとの交流会はとても楽しく有意義な時間となった。
ひとまわり歳上の夫は、お父さんになった気分だと言って、細身のザックにもっと沢山食べなと食事を勧めまくっていた。
食後に行った彼おすすめのジェラート屋さんで、アップルシナモンヨーグルトを注文。はじめて見かけたフレーバーだったがとても美味しかった。
ザックありがとう。
いつかザックと日本で再会出来たら、彼に奈良ドリームランドを案内してもらいたいなと思った。
おわり