ここ最近まで豚バラに縁のない日々だった。
というのも、日本人からしたら信じがたい話だが、ニュージーランドのスーパーや精肉店には豚バラが存在しないのだ。
はじめは気がつかずに生活していたのだが、ある日ふと思った。
豚バラが食べたいと。
正直日本にいたときは身近すぎて、豚バラを欲するなんてことがなかった。
人はないものねだりだ。
スーパーに行ってみると、ポークコーナーには厚切り肉もしくは骨付のみで、薄くスライスされたあのフォルムは見当たらなかった。
そこからは、見切りをつけチキンに頼る生活にシフトした。意識的にポークの存在を自分の中から遠ざけた。
しかし、どうしても食べたくなる日が再びやってきた。
先月ダメ元でアジアンマート(アジア圏の食料品店)へ行くと、2ヶ月以上前にパックされた日付シール付き冷凍豚バラが陳列していた。
買うか悩んだ上、鮮度よりも食欲が勝ったのでお持ち帰りが決定。
500グラムで13$(約1000円)という高いのか安いのかわからない価格だった。
さっそくそちらを豚丼や焼うどん、豚シソ巻きなどに使って、堪能した。
1年以上ぶりに口にしたからか、肉の品質が気になることもなく夫とひたすら美味しいねえと言いながら食べた。
こちらでも日本食がブームなのであれば、豚バラを取り扱って欲しいと切実に思った。
この一件で完全に豚バラ中毒になった私は、近所の精肉店へ向かい、豚バラブロックをスライサーで紙みたいに薄く切ってほしいと無茶なお願いをしてみることにした。
すると精肉店のおっちゃんは、できるけど、、、一度冷凍してからスライスするから翌日の朝になら渡せるよ。と快く引き受けてくれたのだ。太っ腹すぎるサービスに感動してチップをお支払いするべきだったと、のちのち後悔した。
この時に学んだのだ。何事もダメ元でお願いしてみることの重要性を。
そして翌朝受け取りに再び精肉店へ。
受け取った1キロの豚バラは、昨日のただの塊肉から変貌をとげ、美しく折り重なる瘦せ形の肉になっていた。
これがあまりにも嬉しくてTwitterでつぶやいたところ、たかだかフォロワー140人のアカウントにも関わらず、70件を超えるいいねがついていた。
いいねをくれた方々のアカウントを覗いてみると、NZ在住者他、オーストラリア、カナダ在住の方が多かった。
私だけでなく、豚バラ難民の共感者が思いの外多くいたことに驚き、嬉しかった。
豚バラにお困りの海外在住かつ近くに精肉店がある方は、紙みたいに薄くスライスしてと、ぜひお願いしてみてほしい。
単なる憶測だが、生ハムを置いているお店はスライサーがある可能性が高いので、よほど忙しくなければ承諾してくれるであろう。
これでいつでも美味しい豚バラが食べられるね、と夫と喜び合い5食分にきっちり分けて大事に消費している。
きっとすぐ手に入ると分かった時点で、豚バラへの執着心が少しずつ薄れていくのを私は知っている。
なんだってそうだ。手に入れたいものがいつでも手に入るとなると、途端に興味がなくなるのだ。
それでも、近くにこのようなめんどくさいサービスを快く引き受けてくれる精肉店があることに感謝をして、残り2食となった豚バラをどう調理するのか熟考するのんきな自分が嫌いではない。
おわり